真夜中に電話が鳴る。認知症の一人暮らし。 「どうしたらいいんですか」 昼間もおんなじ電話があった。一回じゃない。 行って見てくるけれど、 「もう大丈夫です」と、あっけらかんだった。 電話でなんとか安心させる。 「わかりました」 と電話は終わる。 それから、2時間後、3時間後にも電話は鳴った。 「どうしたらいいんですか」 もう行くしかない。 空は白くなり始めている。
わたしの笑顔はマスクの下で、いびつに歪んでいるだろう。 かける言葉のうらがわには、搾り上げてやりたい気持ちが潜んでいるだろう。 だけれど。 この人は、わたしがいるだけで、わたしが話すだけで、お菓子を食べたあとみたいな顔をする。 わたしは、あまくて、おいしい、まっ黒の、とげとげのこんぺいとうなのだ。
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